*アフター・バレンタイン!


放課後

 アホサイユで寛ぐ天十郎と千聖の姿を見つけ、真奈美はほっと息を漏らした。
 朝からずっと声を掛けようと思っていたのに、上手くタイミングが合わず、今まで彼らを捕まえることができなかったのだ。
「天十郎君に千聖君、昨日はありがとね」
「あぁ?」
「……ん?」
 そう呼びかけながら近づくと、二人は意図を掴みかねた様子で眉を少し顰めた。
「えっと、昨日なんとか選手権のお祝いをして貰っちゃったじゃない?」
「ああ、『第18回 チョコを一番多く貰った幸せモンは誰だ!?選手権』のことか!」
「あっ、そうそれ。でも、第18回って、結構歴史があるものなんだね?」
「くぁぁ〜…いや、全くない」
「え?」
「18ってのは、適当でぇ。いつから始めたなんて覚えてねぇからな」
「面倒だから、天の年齢に合わせることにしただけだ」
「そ、そうだったんだ……」
「ちなみになぁ、俺様に最高のチョコを寄越した女は、即日天十郎様の嫁になれるっつー豪華特典付きよぉ!」
「へぇ、そんな特典も付いてるの? 相変わらず凄いね、天十郎君主催のイベントは」
「お、おうよ」
「昨日は最高のチョコ、貰えた?」
「……お、おう。い、いや、やっぱ貰ってねぇ!! あれはノーカウントでぇ、全員同じモンってのは絶対ぇ俺様は認めねぇからな!! 次こそ、最っ高のチョコをゲットしてやるぜ!!! ……というか用意しろ」
「え? 何?」
「なんでもねぇ!」
「…そう? でも来年も楽しみだね」
「ま、まあな! しかも、来年の『第19回 チョコを一番多く貰った幸せモンは誰だ!?選手権』の優勝者には、俺様の嫁になれるっつー超豪華特典も付けるつもりだぜぃ!」
「……天、もう何でも有りだな」
「うっせぇ!」
「ええっ、ってことは男の子をお嫁さんにしちゃうの!?」
「ば、バッカ野郎ぉ!! そんな訳ねぇだろ!! この選手権には女も参加可能なんでぇ!! ……今年から、そうなった」
「あ、なるほど。びっくりしたー」
「……びっくりしたのは俺様の方でぇ」
「……同じく」
「でも、ちょっと寂しいな」
「あぁ?」
「……?」
「来年は、天十郎君たちが行く大学でやるんでしょ? その選手権」
「ぐっ」
「よかったら、あとで結果だけでも教えてね?」
「…………」
「…………その必要はない」
「え?」
「千?」
「選手権は天がいるところ全てで行われる。だから天がここに来れば、聖帝ももれなくその会場になるということだ。結果などすぐ分かるだろう」
「そ、そうだぜぇ! どんな遠くにいても、御輿で参上してやらぁ!!」
「天十郎君…」
「それに、例え天が来られないときでも、俺は必ずお前に会いに行く。だから寂しがる必要もない」
「千聖君も、ありがとう…」
「千、オメェ、それはただの抜け駆けだろーが!!」
「天にしては、よく気が付いたな」
「なにをぅ〜!?」
 天十郎は声を荒らげるが、千聖は慣れたもので、全く動じる様子を見せない。
 そんな二人のやり取りを、真奈美は目を細めて眺めていた。
「おい、先生!」
「え、は、はい!」
 天十郎に鋭く睨まれ、思わず声が上ずる。
「一年後もいいけどよ、一ヵ月後も覚悟しておけよ!」
「へ、覚悟?」
「何があっても、絶対ぇオメェに会いに来っからな! 三倍返し、期待して待っていやがれ!!」
「まぁ、例え天が来られなくても、俺は必ず会いに行く。だから安心しろ」
「この俺が安心できるかぁ〜〜〜!!!!!」
 天十郎の怒鳴り声が、放課後の聖帝学園に反響した。





 以上です、読んでくださってありがとうございました!
 来年こそは、ホワイトデーSSを書きたいです。


 2009.3.14.up