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*アフター・バレンタイン!


昼休み

「あ、センセー発見~♪」
「やあ、ティンカーちゃん」
 職員室に向かって歩く真奈美を二つの声が呼び止めた。
 声がした方角――廊下の先に大小二つの影を確認すると、真奈美は微笑みを浮かべながら、それぞれの名を呼んだ。
「あ、八雲君とアラタ君、今からお昼?」
「ううん、ご飯は終わったとこだよー」
「時間が余ったから、アホサイユにでも行こうと思ってさ」
 そう言って真奈美の方に足を進める二人の手には無数の紙袋が掛けられていた。その口からは、可愛らしく包装された多くの小袋や小箱の姿が覗き、入り切らなかったものは彼らの両手に山のように積み重ねられている。
 その状況を目の当たりにし、真奈美はただ感嘆の声を漏らす。
「わ~、相変わらず凄い量のプレゼントだね」
「うん、ファンの子が作ったんだって。これとかすっごく美味しそうだよねぇ」
「フフーン、ビックリした? ZOT? ぜ~んぶオレの宝物だよ」
「ふふっ、八雲君とアラタ君にはバレンタインデーも普通の日もあまり変わらないみたいだね?」
「ええー、そんなことないですよ~」
「そうだよ、ティンカーちゃん。バレンタインはちょちょちょ~トクベツな日だよ?」
「うーん、でもその量を見る限りは……」
「ちっちっち。センセーは何も分かってないでーす」
「え?」
「このプレゼントには、ファンの子たちからの『やっくん、頑張ってね!』の気持ちが詰まってて、昨日のチョコには『やっくん、大好き!』の気持ちが詰まってるんだよ~」
「それに、いつもは隠れている恥ずかしがり屋なお花も、バレンタインでは顔を見せてくれたりするしね。やっぱりトクベツだよ」
「そっか、普段プレゼントを渡せない子でも思いを伝えられる日なんだね」
「そうなのでーす」
「思いがけない相手から貰えたりすると、MSU? マジサイコーに嬉しいよ」
「そんな訳でぇ、昨日もホントにサイコーだったナリ~」
「フフン、それはオレにとってもかな」
「へぇ、そうだったんだ?」
「うんっ、だってセンセーから貰えたからねっ♪」
「えっ、私!?」
「そうそう、ちょ~っと諦めかけてたから、その分感動が大きかったね」
「ありがとね、センセー♪」
「う、喜んで貰えたなら、私も嬉しいけど…。それに昨日は私だって、みんなからなんとか選手権のお祝いをして貰って嬉しかったよ。本当にありがとう」
「ううん、気にしないで~」
「オレたちの込めた想い、ティンカーちゃんにはちゃ~んと伝わったかな?」
「うんっ、いっぱい笑ったし、すごく楽しかったよ!」
「…………う~ん。ピーちゃん、微妙に伝わってないかもです」
「…………あはは、そうみたいだねぇ、やっくん」
「?」
「ま、昨日のお祝いはいいとして、そういうティンカーちゃんは、オレたちへのチョコに『頑張ってね!』と『大好き!』のどっちを込めてくれたんだい?」
「ええ!? う、あの……」
「あれ~、顔が赤いよ、オレの可愛い妖精さん?」
「も~、ピーちゃんってば、センセーをいじめちゃダメだよぉ! でもね、センセー?」
「は、はい!」
「今度くれるときは、『大好き!』をいっぱいちょうだいね♪」
「オレもマジで期待してるからさ」
「う、頑張ります…」
 八雲とアラタに詰め寄られ、真奈美は思わずそう答えてしまった。
「まぁ、『大好き!』の込め方は、来月教えてあげるよ。アラタ様が直々に、ね」
「え、来月?」
「あ、ぼくもぼくも~」

 キーンコーン……
   カーンコーン……

 そんな和やかな談笑のひとときを授業開始を報せる鐘の音が遮る。
「ああっ!」
 真奈美はそのとき初めて、自分がまだ昼食を済ませていないことに気が付いた。



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 バレンタイン後日談、2つ目ナリ。
 個人的には一番苦戦しました~。ラストは天千コンビです。


 2009.3.12.up