* その先にあるもの *
木々の合間から漏れる眩しい日差しを遮るために左手をそっと頭の上に翳すと、一瞬目の前がきらりと光った。
そこにあるのは、幸運のお守り。
ブカブカだけれど、似合わないと言われたけれど、絶対手放したくない私の宝もの。
でも、それだけじゃない。
左手を翳して、そのお守りをじっと見つめていると、なんだか元気が出てくるような気がした。
シルメリアがいなくなって、初めて一人になった。
今まで何度も何度も望んだことなのに、全然心が満たされない。
怖かった。不安だった。ルーファスに頼るしかないと思った。
私一人では、何もできないから。
それでも、頑張って走った。ただ、がむしゃらに。
隣には、いつもルーファスがいてくれた。
独りじゃなかった。
“あなたが神になるのを見届けたい”
本心だった。初めて言葉にした自分の意思。
今までは、シルメリアの望むままに生きていたから。
不安だった。
拒絶されることが怖かった。
でも、あなたは受け止めてくれた。
私の想いを。しっかりと。
嬉しかった。
少しだけ恥ずかしかったけれど。
思い出して、また赤面してしまう。
突然足に力がなくなり、体勢を崩す。
「きゃっ」
思わず、小さく悲鳴を上げてしまう。
「っと」
肩を抱いてくれたのは、ルーファスだった。
彼の緑の髪が肌に触れる。胸が少し熱い。
「おいおい、ぼーっとそればっか見てんなよ。転ぶぞ」
そう言うルーファスの頬は少し紅潮していた。
でも、と言い掛けた私の左手に触れると、そのまま自分の方に引く。
「危なっかしいからな、引っ張ってやる」
ぶっきら棒に言ってルーファスは顔を前方に向け、足早に歩き出した。
私はそれに追いつくだけで精一杯で、彼の顔を見ることはできなかった。
左手があたたかい。
指にあるのは、幸運のお守り。
私を元気づけてくれる大切な宝もの。
でも、それだけじゃない。
あなたが、その先にいる。
ユグドラシルでの会話後、オーディン戦前くらいの話です。
三人称にしたかったのに、アリーシャ視点になってしもうた〜。くさくてすみません(>_<)
2006.7.8.up